【ドーハ(カタール)2013年12月11日PRN=共同JBN】世界のリーダー、政策立案者たちが第1回World Innovation Summit for Health(WISH)で最も緊急な世界的健康問題への革新的な解決策を討議するため、11日ドーハに集まった。
Source: Kyodo News Digital
【ドーハ(カタール)2013年12月11日PRN=共同JBN】世界のリーダー、政策立案者たちが第1回World Innovation Summit for Health(WISH)で最も緊急な世界的健康問題への革新的な解決策を討議するため、11日ドーハに集まった。
Qatar Foundation for Education, Science and Community Development(カタール教育・科学・共同体開発財団)のシェイク・モザビント・ナセル会長の後援の下で、WISHは国家元首、閣僚、政府高官、学者、影響力のあるビジネスリーダーを含め、67カ国から1000人近い世界的な健康イノベーター、政策立案者を集めた。
サミットは肥満、精神的健康、説明責任のあるケア、ビッグデータと健康管理、抗菌薬耐性、終末期ケア、患者関与、交通事故による負傷という多様な健康問題をカバーする技術的進展、新しいビジネスモデル、設計ベースの解決策を含め、世界中から実際的な範囲の最近のイノベーションを紹介する。また健康と倫理に関する専門家会議も開かれる。
イノベーションはこれらの新たなアイデアを実際的なソリューションに変えた人々とともに最先端の革新的な「ポッド」に展示される。
サミットの代表団はUnited Health Groupのグローバル健康ディビジョンのサイモン・スティーブンス社長、ミャンマー国民民主連盟のアウン・サン・スー・チー議長、ボリス・ジョンソン・ロンドン市長、GEヘルスケアのジョン・ディニーン社長兼最高経営責任者(CEO)を含む著名な基調報告者の講演を聴く。
ジョンソン・ロンドン市長は「世界的な意味を持つ健康問題は多いが、世界のすべての国は自国の難問にも直面している。主要な国際的リーダーが一堂に集まるのはアイデアを交換し、ほかのすぐれた革新的な仕事から学ぶための大きな機会である」と語っている。
WISH執行議長のダージ・オブ・デンハム教授は「健康管理はこれまでで最大級の困難に直面しており、それへの対処に成功するためにすべての国は病気を治療、予防するための新たな革新的な方法を見つけなければならない。世界中のすべての国で人々が最良のアイデアを選び、それを実行して、われわれが知っていることとわれわれが行っていることの間のギャップをなくすよう励ましたい。そして現実に違いをつくり出せる人々をまとめることによって、あらゆる場所で人々の健康改善を助けるというのがわれわれの念願である」と述べている。
サミットの第2日には、8カ国の健康管理システムがどのように発展し、実施され、医療イノベーションを共有しているかを調査、比較する画期的な計画である「世界イノベーション普及」リポートの開始が含まれる。この革新的な研究はカタール、インド、ブラジル、英国、米国、オーストラリア、スペイン、南アフリカ各国がどのように最良の新たなアイデアを普及させて住民の健康管理を改善したかを調査する。
WISHはQatar Foundationの目的と念願を支持し、医療イノベーションの新興センターとしてのカタールの役割を強化する。カタールは地域の健康管理改革の最前線であり、ビジョンのある国家健康戦略を導入している。その使命の一環としてQatar Foundationは一連の健康管理計画−医療の科学的研究から母親の健康、臨床ケアまで−を開始している。
Qatar Foundationのサアド・アル・ムハナディ会長は「Qatar Foundationはカタールの国家的ビジョン2030年を実現させ、健康で強力な社会をつくり出す計画を支持する。カタールと外国で健康管理イノベーションを促進することはQatar Foundationが進めていることの一部であり、世界各地からWISHとカタールに有名ゲストを迎えるのは大きな喜びである」と語った。
編集者注
1.WISHはSidra Medical and research Center、Qatar National Bank、Qatar Petroleumからダイヤモンド・スポンサーの支援を受けている。
2. 8件のリポートは次の通り。
▽説明責任のあるケア
健康管理のコストは各国の対応能力より速く増大している。困難なのはケアの質を改善しながら支出の増加速度を遅らせることである。イノベーションを奨励し、効率を改善し、コストを削減するためにはケアの提供、それへの支払いのやり方を根本的に変えることが必要である。健康ケアの管理者は重点をサービスの提供−病院が実施する手術の数−から結果の提供−どれだけの患者がよくなったか−に切り替えるべきであり、病院など健康管理提供者はその実績について説明責任を負うべきである。シンガポールは2008年から終末期の病気に対するホームケア計画と慢性疾患に対する「共同体医療ホーム」の先頭に立っており、後者によって再入院は40%減少し、コストは1100万ドル減少し、救急車の出動は半減した。結果は改善され、提供された「治療」の量は減少した。スウェーデンのリュホブ病院では透析患者の60%がいまでは自宅で透析を管理しており、ベッドや医師と過ごす時間から解放され、結果はよくなり、副作用は少なくなった。専門家パネルによると、各国政府は結果に対して支払うことを開始し、選択と競争の制限を意味しかねない組織同士の間で協力を支援する必要がある。
▽健康におけるビッグデータ
新たな治療法への医学の前進を説明するのは人間の行動が巨大な多様性を持っているために困難であることが実証されている。われわれが頼っている電子機器−携帯電話から顧客カードまで−がつくり出すデータの流れを監視することによって、これまでに入手できたよりもはるかに完全な画像をわれわれは入手できる。米国では、マサチューセッツ工科大学の研究者たちが、風邪をひいたかインフルエンザにかかったとインタビューで回答した人の携帯電話を追跡することによって、風邪にかかるリスクが最も高い場所を示すキャンパスの地図を作成した。パキスタンのラホールでは、専門家たちが同市で感染率が最も高い地域の地図をつくり、携帯電話を使ってよどんだ水たまりの場所を記録して水を干したり、(ボウフラを食べる)魚を飼ったりすることによって、デング熱の深刻な拡大を抑え込んだ。しかし「現実の採掘」−まとめて「ビッグデータ」と呼ばれる電子機器から出た「デジタルパンくず」の追跡−はわれわれの個人的な生活に対する大規模な侵入を示唆するので、警戒を生み出している。専門家パネルはプライバシー、データ所有政策の更新と結びついた世界的な健康の利益のためのデータ共有を促進する国際憲章の制定を呼びかけている。
▽メンタルヘルス
精神疾患は世界で数百万人を冒しているが、いまだに世界の健康問題で最も無視されているもののひとつでもある。ほとんどの低中所得国では、メンタルヘルス問題の治療、防止に健康保険関係予算の2%以下しか使われていない。最大の問題のひとつは、限られたリソースでどのようにメンタルヘルスケアの必要性に対応するかである。英国では医師による治療の補助として、170万人の患者が特別な訓練を受けた心理療法士の治療を受けている。3分の2の健康状態が改善し、この計画は働けない人と疾病手当を受ける人の数を減らすというそれ自体で引き合った成果をあげている。チリでは、精神科医と家庭医とのコラボレーションによるうつ病の診断・治療改善計画によって、回復率は30%から70%に改善し、費用対効果もあがることが立証された。またいくつかの地域では、臨床精神科医の治療範囲を拡大するため、新技術が取り入れられている。インターネットを利用したオーストラリアの認知行動療法は7000人以上の患者に使用され、30%の回復率を示し、治療費は対面治療の10分の1になっている。専門家会議は、アクセスを増やし、病気を特定し、早期治療を行うため新技術を使用した広範なメンタルヘルスの労働力を構築すべきであると呼びかけている。
▽寿命末期
多くの国で、死と臨終はタブーとなっている話題である。毎年1億人以上の人が終末期治療患者として緩和治療を必要としているが、わずか8%以下の人しかそれを受けていない。人生の終末期におけるこの不必要な苦難は世界的悲劇になっている。専門家会議は、各国が終末期ケアのため国家的戦略を制定すべきであり、健康管理に緩和措置を含め、終末期患者のためオピオイド医薬の制限を撤廃するよう求めている。コロンビアでは2007年にワークショップに続いてペインケア専門家が問題を見分けるようになった国家政策が導入され、3年間でモルヒネ様医薬の販売は3倍になった。ウクライナでは、毎年約50万人が緩和治療を必要としていながら、650地区にわずか9カ所のホスピスがあるにすぎない。2013年、コロンビア政府は強力な医薬品のために4人の医師のサインが必要だった規制を緩和し、患者は家庭でオピオイド医薬を15日分保管できるようになった。インドのケララ州では、自宅にいる人にケアを届けるボランティアのネットワークができた。インド政府は、人口のわずか3%にすぎないにもかかわらず、インドの3分の2に緩和治療サービスを提供する「希望の光」と見なしている。専門家会議は、西洋医薬品へのアクセスが限定されている所では、伝統的療法者を見つけるべきであると指摘している。
▽抗微生物薬耐性
細菌が近代医薬に耐性を持つようになり、われわれは感染症との戦いに負けている。耐性の増加に対する戦いに対策を講じなければ、人工股関節置換術のように普通に行われている手術は数年以内に非常に危険な手術と見なされるようになるだろう。英国の最高医療責任者(CMO)で専門家会議議長のデーム・サリー・デービス教授は「医師としてではなく、母親、妻、友人としてだが、この数字は怖い」と話している。毎年世界で50万人以上が耐性感染症で死亡している。専門家会議は、ヒト、動物への抗生物質使用を制限する強力な規制措置と新薬開発へのインセンティブおよび世界で「警戒が必要な数に達している」死亡者を減らすため耐性を持つ微生物拡散の監視に関する国際的協業を呼びかけている。生産されている抗生物質の70%は動物用である。そのうち4分の3は成長促進用に使われている。専門家会議は、この処方に基づかない抗生物質使用の禁止を呼びかけている。予防接種が助けとなる。ノルウェーでは、サケに予防接種を施し抗生物質の使用を98%削減した。抗生物質開発を手がける製薬会社の数は、業績不振のため1990年の18から現在5と劇的に減少した。専門家会議は、イノベーターのため、高価格、長期特許期間、安定した収入の道を探求すべきであると指摘している。
▽肥満
現在世界で1年間に300万人に死をもたらしている肥満というパンデミックが起きている。肥満は心臓疾患、脳梗塞、2型糖尿病、ある種のがんの主要な原因になっている。1990年から2020年の間に、この非伝染性疾患は77%増加すると予測されている。これは50年かけて延ばしてきた平均余命を逆転させる恐れがあり、国の健康システムに重圧となる恐れがある。カロリー摂取の削減、運動増進は健康問題を超えて教育、小売り、農業、金融セクターに拡大している。フランスでは、2つの町を対象に12年間にわたる研究が行われた。ひとつの町は学校、親、コミュニティー、メディアが肥満防止に取り組み、別の町より肥満率が大幅に低くなった。このイニシアチブ(運動)は欧州の275カ所の町や都市で実施に移された。中東、オーストラリア、ニュージーランド、米国、カナダ、英国で活動する社会事業計画はウエストの寸法を減らすことに大きな成果をあげた。「Mind Exercise Nutrition Do It」プログラムは、子どもの食事習慣を変えようと望んでいる家庭に、実際の生活と健康的食事を教えるため、訓練を受けたスタッフを9週間派遣する方法を採っている。専門家会議は各国の健康担当大臣に対して、肥満対策を公に支持し、食事、運動の改善目標を立て、食料表示基準を確立し、栄養ガイドラインを設けるべきであると提言している。
▽交通事故による負傷
毎年100万人以上が交通事故で死亡し、数百万人が負傷している。最も被害の大きいのは急速な経済発展を続ける中近東で、カタールでは交通事故死はがんや心臓疾患による死亡者を上回っている。シートベルトの価値がこの40年間で認識されているものの、世界人口の69%しかシートベルト法によって完全に守られていない。議論されたイノベーションには、社内のアルコール検知器、チャイルドシートの頭部保護フォーム、運転中の文字通信禁止、住宅地での低速地域設定などがある。オーストラリアのビクトリアでは2001年にArrive-Alive(生きて帰る)戦略が始まった。それまでより警察の参加が増え、スピードカメラが増設されて翌3年間死亡者が16%減少し、メルボルンの低速地域では40%減少した。ブラジルのサンジョゼドスカンポスでは、コミュニティー、政府、地元企業が提携して道路安全促進を展開し、市民の認識を高め取り締まりを強化して2010年から2011年に車両が9%増えたにもかかわらず、死亡事故を41%減少させた。専門家会議は、すべての政府が道路安全に関する世界保健機関(WHO)の基準を採用し、規制を行うと共に国民に交通事故の危険性を知らせるべきであるとしている。
▽患者の参加
厚生大臣は、国民の健康改善についてめまいを起こすようなさまざまな可能性に直面している。しかし最も重要な専門家は、自分の健康状態を管理するごく普通の人々でありながら、大体がこの方程式から取り残されている。インターネットやソーシャルメディアといった電子的交信手段が出てきて、患者はますます自分の声を発するようになっている。メンタルヘルス、終末期ケア、抗微生物薬耐性の分野で、患者は治療の品質、コスト削減を改善する強力なツールである。2011年のオーストラリア、欧州、北米の全11カ国における調査で、自分のケアに参加した患者は、ヘルスシステムについて高品質、より少ない過誤、より肯定的評価を報告している。Danish Society of Patient safetyは「白衣の沈黙」を克服するため、「Just Ask」キャンペーンを行い、患者に自分のケアについて質問するよう奨励した。調査結果によると、調査対象の86%は医療スタッフとの会話が改善した。WHOは現在、新生児の出生後最初の7日の高リスク期間中に使用する母親用チェックリストを開発している。これは母親が緊急時の医療ケアを求める時期を決める助けになる。専門家会議はヘルスケア組織に対し、品質改善を支援し方針を設定するため、患者とファミリーアドバイザーを指名するよう求めており、ヘルスケアのスタッフは、恒常的に患者とその家族を意思決定に加えるべきであると指摘している。
3. フォーラムのリポートは以下のサイトで見られる。
http://www.wish-qatar.org/reports/2013-reports
4.報道関係のさらなる問い合わせ先:media@wish-qatar.org
5. WISHについて
第1回World Innovation Summit for Health(WISH)は12月10、11の両日、カタールのドーハで開かれ、国家首脳、閣僚、高官、大学教授、思想家のほか最も影響力がある財界首脳が出席し、世界の健康問題に取り組むために現実的で持続可能、革新的なソリューションの実現を促進する。
WISHはヘルスケアおよび医学の分野で知識と実践との溝を埋めるために、健康政策、医療制度、健康管理の実施の面で協力と新機軸の開発を促進することを目的としている。
WISHはQatar Foundation、Qatar National Vision 2030のミッションとビジョンに足並みをそろえ、ヘルスケア・イノベーションの新たなセンターとして重要度を増すカタールの役割を強調することに寄与する。カタールはヘルスケア改革の先陣を切っており、Qatar FoundationはWeill-Cornell Medical College、Biobank Qatar、Qatar Robotic Surgery Centre 、Qatar Cardiovascular Research Centre、Virgin Health Bank、Sidra Medical and Research Centerとの提携を含め、数件の有望な調査研究イニシアチブに着手した。
WISHに関する詳細はウェブサイトhttp://www.wish-qatar.orgを参照。
6. Qatar Foundation(QF)について
Qatar Foundation for Education、Science and Community Development(カタール教育・科学・共同体開発財団)は民間の非営利組織で、カタールだけでなく世界の利益のために人間の潜在的な可能性を解き放つことによって、カタールがカーボン経済から知識経済への移行に乗り出すことを支援している。QFは1995年、カタール首長のシェイク・ハマド・ビン・ハリファ・アル・タニ氏によって創設され、首長の妻シェイク・モザビント・ナセル氏が会長を務める。
QFは教育、科学・研究、コミュニティー開発の3つの戦略的支柱に設定し、その使命を遂行している。教育に関するQFの支柱は、カタールに世界クラスの大学を誘致し、若者が知識経済で必要とされる思考および技術をはぐくむことができる教育セクターの創設に寄与する。一方、科学・研究に関するQFの支柱は、主要な科学技術を通じてソリューションを開発、商用化することによってカタールの革新および技術能力を構築する。最後に、コミュニティー開発の支柱は進歩的社会を育成するとともに文化生活を向上させて、カタールの伝統を保護し、コミュニティーが直面する社会ニーズに応える。
QFのイニシアチブおよびプロジェクトに関する全リストはウェブサイトhttp://www.qf.org.qaを参照。
Qatar Foundationに関する詳細はプレスオフィスpressoffice@qf.org.qaまで電子メールで問い合わせを。
7. Sidra Medical and Research Centerについて
Sidra Medical and Research Centerはカタール・ドーハで建設が進んでいるが、完成すれば画期的な病院、研究、教育機関となり、地域および世界中の女性と子どもの健康と福祉に重点的に取り組む。Sidraは完全にデジタル化された施設で、診療、研究、業務機能に最新鋭の情報技術アプリケーションが組み込まれている。Sidraは当初、400病床でスタートするが、その後550病床に拡大できる構造基盤を備えている。
Sidraは会長に就任するシェイク・モザビント・ナセル氏のビジョンを反映している。ハイテク施設は世界クラスの患者治療を提供するとともに、カタールの科学専門知識と人材を育成することを支援する。Sidraは世界最大の基金であるQatar Foundationから79億米ドルの資金提供を受ける。
Sidraはカタールの活発な研究・教育環境の一環を成し、カタールにあるSidraの提携大学Weill Cornell Medical Collegeなど有力な国際機関を包含する。Sidraは世界中の有力機関と強力に連携して、知的エコシステムを構築し、医療研究への投資を通じて科学発見を推進することを支援する。
Sidraは研修医と医師との間で協力する独自の勤務態勢を備え、患者には最高の総合診療、医学生には他の病院にはない学習環境を提供する。Sidraは世界中の医療センターの最高の設計、技術、運営、診療を結集し、使い慣れてはいるが並外れた環境を職員に提供する。
▽問い合わせ先
Doha, Qatar (EST +7 hours)
Ms. Noor Al Kobaisi
nalkobaisi@sidra.org
http://www.sidra.org
ソース:Qatar Foundation